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退職金支給と資金繰り|中小企業が直面する大型一時支出を乗り切る実践ガイド
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退職金支給と資金繰り|中小企業が直面する大型一時支出を乗り切る実践ガイド

退職金は従業員の功労に報いる大切な制度ですが、支給時には数百万円から数千万円規模の一時的なキャッシュアウトが発生します。中退共・生命保険による積立から、資金不足時のファクタリング活用まで、中小企業経営者が押さえるべき実務を解説します。

ファクナビ編集部

ファクタリング業界に精通した編集チームが、資金調達に関する正確で実践的な情報をお届けします。金融機関での実務経験者、中小企業の財務コンサルタント経験者を中心に構成されています。

ファクタリング資金調達中小企業金融売掛金管理
退職金と資金繰りのイメージ
退職金と資金繰りのイメージ

「突然の退職通知」——中小企業の資金繰りを直撃する一時支出

長年勤めた従業員が「来月いっぱいで辞めたい」と申し出てきた。就業規則には退職金規程がある。計算すると800万円の支払いが必要だが、来月末までに口座残高がそこまでない——。

こうした事態に直面する中小企業経営者は珍しくない。退職金は賞与と違い「いつ払うか」が事前に読めない。長期勤続者が複数人同時期に退職すると、数千万円規模のキャッシュアウトが短期間に集中する。

本記事では、退職金制度の基本から積立方法、いざというときの資金調達手段まで、中小企業経営者が知るべき実務を整理する。

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退職金制度の基本——法的義務と実務上の重要性

退職金は法律上の義務ではない

退職金の支払いは、労働基準法上の義務ではない。就業規則に退職金規程を設けていなければ、支払義務は発生しない。

ただし、就業規則に「退職金を支払う」と明記した時点で、それは労働条件の一部となり、支払義務が生じる。「資金がないから払えない」では通らない。

退職金がある企業の割合

企業規模退職金制度あり
従業員30〜99人約72%
従業員100〜299人約83%
従業員300人以上約92%
※厚生労働省「就労条件総合調査」を参考に編集部が整理

中小企業でも7割以上が退職金制度を持っている。採用・定着の観点からも「退職金なし」は不利に働く場面がある。

自己都合退職 vs 会社都合退職

多くの規程では、退職理由によって支給率が異なる。

退職理由一般的な支給率
定年退職100%
会社都合退職90〜100%
自己都合退職(勤続10年以上)60〜80%
自己都合退職(勤続5年未満)30〜50%
自己都合退職の場合は支給率を下げることで、会社の支払い負担を軽減できる。ただし不合理な低支給率は紛争のリスクになるため、同業他社水準を参考に設定する。
書類チェックの様子
書類チェックの様子

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退職金の計算方法——相場と計算式

基本給連動型(最も一般的)

``` 退職金 = 退職時の基本給 × 勤続年数別の支給係数 × 退職事由別の支給率

例:基本給30万円・勤続20年・自己都合退職(支給率70%)の場合 30万円 × 24(係数) × 70% = 504万円 ```

係数は企業ごとに異なるが、勤続年数が長いほど高くなる設計が多い。

ポイント制

勤続年数・職位・業績ポイントを累積し、退職時に1ポイントあたりの単価を掛けて算出する方法。

``` 退職金 = 累積ポイント × ポイント単価

例:累積5,000ポイント × 2,000円 = 1,000万円 ```

年功序列が薄れた職場での導入が増えている。

退職金の税金(退職所得控除)

退職金は給与と別の「退職所得」として課税されるが、退職所得控除が大きく税負担は軽い。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数−20年)
勤続30年なら控除額は1,500万円。退職金1,500万円以内なら課税される退職所得はゼロになる計算だ。会社は源泉徴収の手続きが必要だが、従業員の手取りへの影響は小さい。

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退職金の積立方法——4つの選択肢と比較

退職金の原資を事前に確保する方法は大きく4つある。

積立方法節税効果手軽さ資産の安全性向いているケース
中退共(中小企業退職金共済)◎(全額損金)○(国保証)従業員規模が小さい中小企業
企業型確定拠出年金(DC)△(制度整備が必要)○(分散投資)ある程度規模がある企業
生命保険(解約返戻金型)△(一部損金)経営者の生命保険と兼ねたい場合
社内留保✕(損金不算入)△(流用リスク)小規模・制度整備が難しい場合

中退共のメリット・デメリット

メリット

  • 掛金は月額5,000円〜3万円で全額損金算入できる
  • 新規加入時に助成金あり(掛金の2分の1、最大4,500円)
  • 国の機関(独立行政法人勤労者退職金共済機構)が運営し安全性が高い
デメリット
  • 一度加入すると掛金を会社が受け取ることはできない(従業員への直接支払い)
  • 加入できるのは一定規模以下の中小企業のみ
  • 解約すると従業員への返還となり、会社のキャッシュには戻らない
中退共は毎月の定額拠出で計画的に積み立てられる点が中小企業に向いている。一方で資金繰りが苦しくなっても解約して運転資金に回すことができないため、安定した収益が見込める段階での加入が望ましい。

資金積立計画のイメージ
資金積立計画のイメージ

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退職金支給のキャッシュフロー——実例で見る資金インパクト

ケース:従業員30名の製造業

長期勤続の従業員が3名同時期に退職するケースを見てみよう。

``` 従業員A(勤続30年・課長):退職金 1,200万円 従業員B(勤続22年・一般職):退職金 650万円 従業員C(勤続15年・一般職):退職金 380万円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 合計退職金支払額: 2,230万円 (社会保険料は退職金には原則不要) ```

通常月の固定費が500万円の企業にとって、退職金2,230万円は約4.5ヶ月分の固定費に相当する。中退共への加入がなければ、運転資金から捻出するしかない。

月次キャッシュフローへの影響

項目通常月退職金支給月
売上入金800万円800万円
固定費・変動費-500万円-500万円
退職金支払0円-2,230万円
月末残高+300万円-1,930万円
事前の積立なしに直面すると、約1,930万円のキャッシュが不足する計算だ。

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資金不足時の対処法——ファクタリングを含む選択肢

退職金の支給期日が決まっており、原資が不足している場合の選択肢は4つある。

選択肢1:中退共・生命保険の活用

積立がある場合の最優先。中退共は手続き後1〜2週間で支給される。生命保険の解約返戻金は申請から2〜4週間かかることが多い。

選択肢2:金融機関の短期融資

メインバンクに運転資金融資を打診する。金利は低いが審査に2〜4週間必要。退職が決まった段階ですぐに動き出すことが重要だ。

選択肢3:日本政策金融公庫

中小企業向けの公的融資で金利は低め。ただし審査に1ヶ月以上かかるため、支給期日が1ヶ月以内であれば間に合わない可能性がある。

選択肢4:売掛金のファクタリング

手元の売掛金を最短即日〜数日で現金化する方法。借入ではないため貸借対照表に負債は載らない。手数料(2〜18%)は発生するが、資金化のスピードが最大の強みだ。

対処法スピードコスト決算への影響備考
中退共・保険解約1〜2週間なしなし積立がある場合の最優先
短期融資2〜4週間金利1〜3%負債増余裕があれば検討
公的融資1ヶ月〜金利1〜2%負債増早期申請が必要
ファクタリング最短即日手数料2〜18%負債増なし直前の不足に対応可能
退職日の1〜2週間前に不足が判明した場合は、ファクタリングが現実的な選択肢になる。
関連記事: ファクタリングと資金繰り|売掛金を活かして手元資金を確保する方法

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ファクタリング活用の具体例

先ほどの製造業ケースで、退職金2,230万円のうち1,500万円をファクタリングで調達するケースを見よう。

項目金額
ファクタリングする売掛金1,600万円
手数料(8%)-128万円
実際の入金額1,472万円
不足額(手持ち資金で補填)758万円
退職金支給後の手元資金14万円(最低限確保)
手数料128万円は発生するが:
  • 退職金を予定通り支払うことで、退職者の信頼・会社の評判を守れる
  • 他の従業員への安心感につながり、離職連鎖を防ぐ
  • 決算書に負債が載らず、来期の銀行融資審査への悪影響を最小限にできる
  • 2〜3日で資金化できるため、支給日に間に合う
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退職金制度の見直しポイント

既存の退職金規程が重すぎる場合、制度変更も検討できる。ただし不利益変更には労働者の同意が必要だ。

段階的な移行の例

  • 従来制度(基本給連動型)からポイント制へ移行:勤続年数だけでなく貢献度を反映できる
  • 退職金の一部を賃金に上乗せ(前払い制度):従業員に毎月支払い、会社の一時負担を平準化
  • 中退共への移行:既存の積立を中退共に引き継ぐ形で整理できる
いずれも労使間の合意・就業規則の変更・届け出が必要。社会保険労務士や弁護士と連携して進めることが重要だ。
ミーティングの様子
ミーティングの様子

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退職金準備のチェックリスト

確認項目チェック
就業規則に退職金規程があるか(ある場合は内容を把握しているか)
全従業員分の退職金試算額(会社都合・自己都合別)を試算しているか
中退共・確定拠出年金・生命保険など積立の仕組みがあるか
積立残高は退職金試算額の何%を賄えるか把握しているか
10年以上の長期勤続者が何名いるか把握しているか
退職金支給月の資金繰り計画に退職金を織り込んでいるか
資金不足時の対処法(ファクタリング等)を把握しているか
退職金規程の見直しを最近行ったか(5年以内)
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まとめ

退職金は「将来いつか払うもの」ではなく、今日の資金繰り計画に織り込むべき実務上の負債だ。

  • 就業規則に規程があれば法的支払義務が生じる——制度と積立はセットで設計する
  • 中退共は中小企業に最も使いやすい積立制度で、掛金全額損金算入・国の助成も活用できる
  • 長期勤続者の退職は数百万〜数千万円のキャッシュアウト——事前積立が基本
  • 積立不足・突発的な退職には短期融資・ファクタリングが選択肢。期日が迫っているならファクタリングのスピードが強み
  • 退職金制度が重荷になっているなら、社労士と連携して段階的な見直しも検討できる
「払えると思っていたが実際には手元にない」——そんな事態を防ぐため、今すぐ全従業員分の退職金試算を行い、積立残高と突き合わせてみることをお勧めする。
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